修羅の日記(公開試運転中)

ダイアリーから移転しました

ピンホール・カメラ始末記

■これも20年近く前の話ですが・・・・。
■"A Treasury of Model Railroad Photos"(和訳としては「珠玉の鉄道模型写真」ですかね)米カルムバック社からモデルレイルローダーの特集として出された本。有名なデイブ・フレイリー、マルコム・ファーロウ、ジョン・オルソン、ポール・スコールの4人が、それぞれの鉄道模型写真の撮影機材や撮影テクニックについて書いた本。初心者が入門書として真似するには少々、無理がありますが、めちゃくちゃカッコ良くて憧れてしまいました。中でもマルコム・ファーロウがSn3のK-27の写真の横に初めに書いたことば「鉄道模型とその写真は、かつて私が体験したようにあなたを必ずや創造と探求の魔法の巣窟へと誘うであろう」("Modelrailroading and photography can draw you into a magical web of creativity and learning.I know-it happened to me!" )。これにぐっときてしまい、レイアウトづくりにしても、その撮影にしても今でいえば「熱烈なフォロワー」になってしまいました。

■デイブ・フレイリーの本業はNASAのカメラマン、マルコム・ファーロウはロードのミュージシャン、ジョン・オルソンはディズニーの美術プロデューサー、ポール・スコールズは録音スタジオのエンジニアと、自分と比べて何と創造的な仕事に就いているんだろう。カッコ良すぎるぜ! 鉄道模型やるのはネクラなオタクってイメージで見られる我が国と比べて、なんてクリエイティブな趣味なんだろう。

■真似をしたくなるほど魅力的な内容なのに、ちょっとやそっとで真似できるものではない。というのもフレイリーもマルコムもここぞ!って写真は4×5の大判カメラでアオリを使いながら深い被写界深度を確保して撮影しています。真面目に4×5判のカメラを手に入れようかとも思って中古カメラ店や写真雑誌で調べ「お店をたたむ」という人から安く譲ってもらえるような話に飛びついたが、直前で使う自信がなく止めました。

■代わりに手に入れたのが、マミヤC220プロフェッショナルという二眼レフカメラで、これを記事通りにピンホール・カメラに改造するというのをやってみることに・・。


■カメラ本体は割とあっさり簡単に、しかも、確か3万円くらいという安い値段で手に入りました。名古屋・栄のヒダカヤというお店にC220やC330、ローライフレックスが何台も並んでました。応対したおじさんに二眼レフは触ったことがないことを告げると、とても親切に取扱説明書をコピーしてくれたり、実際にレンズを取り外して、裏側のレンズがネジで容易に外れることを確認。なるほどポール・スコールズはこのことを知っていたのだ!!

■改造は裏のレンズを外して、絞りの羽根(diaphragm)の上に、穴のあいた円形の薄い真鍮板を黒く塗って(黒染め併用)嵌め込むだけ、そんなに難しいことではなかった。穴の大きさは0.6ミリにした。この本に出ている計算式によれば、
絞り値 f = 焦点距離 (focal length) / ピンホールの直径 (diameter of hole)
このカメラにはセコール80mm F2.8レンズが着いているので f= 80mm / 0.6mmで絞りはf = 133.333・・概ねf 128となるはず。

■しかし、二眼レフカメラのビューファインダーは、あくまでも上のレンズで画像を見ているので、それこそ現像に出してみないと結果はわからない。それと接写になるので二つのレンズの間隔で生じる「パララックス」の調整が必要で、レンズを蛇腹で繰り出してピントを合わせた後に、三脚の支柱にビニールテープを巻いて標を着け、そこからカメラ本体を5センチ上にあげるという作業が必要になります。

■セコニックの露出計にはf128という設定があるのに驚いた。これでシャッター・スピードを求めると何秒という単位になる。レリーズでゆっくりシャッターを開け、時計の秒針で時間を確認して閉じる。

■現像から上がってみると、もっとカリカリの写真を期待していたのですが、それほどでもありませんでした。それと露出が全然足らなかった。ベルビア2本とコダックのネガフィルム(これは露出がフレキシブルでよかった)を撮影しましたが、ピンホールらしい写真を撮影できないまま、面倒くさくなって止めてしまいました。下に置いた画像は、さっき紙焼きの写真からエプソン複合機でスキャンしフォトショップ・エレメントで画質調整してみたものです。また6×6のフォーマットはそのままでサイズを拡大しています。

■C220を改めて取り出してこれは本当に良いカメラで、また使えないかなと思いました。ファインダーを上からのぞいた時の6×6という正方形の画はとても新鮮です。ただ、あのコダック銀塩フィルムを止めるという時代ですものねえ・・。極めて原始的なカメラで、今時、参考にはならないなあと思いつつ、でもf128のピンホール・デジタル・カメラがあれば、ひょっとしてすごい写真が撮れるかもしれない、などと考えています。懲りないですね(笑)。