修羅の日記(公開試運転中)

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回想、ドイツ生まれ明治時代の機関車B6


 名古屋市科学館には地元四日市石原産業専用線で働いていた蒸気機関車B6、2412が保存されています。
 この機関車の国鉄時代の形式名は2400になり、1902年ドイツ・ハノーバー製のこの機関車の仲間は、オリジナルであるイギリス製の形式名2100、2120、アメリカ製2500に比べてB6、総勢約520輌余の中では比較的少数の部類になります。
 「B6」の名は鉄道作業局時代の形式名で軸配置はC1(○○○。)で粘着重量が大きく、勾配線でもその力を発揮しました。車両数がこんなに多くなったのは日露戦争(1904-1905)軍用に大量にイギリスだけでなくアメリカやドイツにまで発注されたため。
 石原産業には1953年(その5年前から石原にいたらしいが)に国鉄から払い下げられ大事に使われていたのか、製造以来65年以上経過した1968年(昭和43年)7月まで貨車を牽引して活躍しました。

 廃止の前には新聞記事にもなり、当時中学1年の自分は塩浜までこの機関車を見に行きました。今はピカピカに塗られている、現役時代のこの機関車は身体は小ぶりながら、帷子をぶらさげた古武士のように見え、関西本線のC57やD51とは違った魅力を感じて夢中になりました。このときに父に借りたヤシカのカメラで写真を撮ったはずなのですが、残念ながら、撮れていたのかどうかもわからず残っていません。

 今は亡き親父は大正14年(1925年)生まれで、招集される直前に石原産業㈱に就職したそうです。石原産業は中国海南島で燐鉱山開発に進出し、その要員となるべく採用されたのではないかと父が言っていたことがあります。父と同じように、石原産業海南島に送る目的で日本車両㈱に発注したのが昭和17年(1942)製C型タンク機関車S108号だといわれています、僚機B6と同時期に廃車になり、これも神戸市東灘区小寄公園に保存されています。*1S108 は、まるでエコーモデル発売のCタンクを一回り大きくしたようにキャブの屋根の形あたりに同じ日車スタイルを感じます。写真をお見せしたいところですが、残念ながら手持ちの写真がありません。こちらにS108の現役時代をとらえた素敵な写真があります。
>「堀越通生さんの『私の撮った鉄道写真』
 B6や日車タンク機が廃止になる同じ時期に、自分は盲腸炎になり、近くの医者が白血球の数値が高くならなかったため盲腸炎と診断せず放置され、こじれて腹膜炎を併発、後で聞いた話で、あと数日でこの世とおさらばするところを、県立塩浜病院で緊急に手術を受けて助かったことがあります。塩浜病院の病棟は石原産業昭和四日市石油専用線のすぐ南にあり、2ヶ月半寝たきりの状態で、入換機の音をベットで聞いていました。
 幼い時に3線式のOゲージのセット(自由形のEB14だったような?)やHOの入門セット(こちらもフリースタイルのED100が機関車*2 だったような?)は親に買ってもらい、よく走らせて遊んだものですが。入院中に親父が少ないポケットマネーで清水(きよみず)の舞台から飛び降りるように買ってくれたのが、当時、人気絶頂のカツミの「キハ82」の模型で、その後しばらく鉄道模型に夢中になるきっかけとなりました。その後、歩いたりできるようになると入院棟の窓から貨物専用線の入換をずっと見ていたことを今も想い起こします。

 ただ当時は、車軸配置C1(0-4-2)なのになぜ「B6」と呼ばれるのか、このB6が何故ドイツ製で2412という番号なのか?なぜキャブの形が違うのか?あまたあるB6が同じような形をしながら、一つ一つがどこか違う訳は?とか疑問だらけで、きちんと理解していませんでした。きちんと頭に入ったのは遅まきながら大人になってから下記のRMライブラリーを読んだおかげだと思います。B6は圧倒的に輌数が多く、長く使われてアレンジされており、全貌を掴むのは難しいですね。
 やや!左の写真を見ていたら、また新たな疑問?が沸いてきました。シリンダーに枠で囲って書いてある数字13.5とか10.0は蒸気圧でしょうか?、空気溜めに書いてある41-7-6の意味はは年月日のようです。1967年(昭和42年)6月に堀越さんの撮られたキャブの写真にも四角い枠に囲まれて「41-7」「長野工」との文字があります。RMライブラリーには「1966(昭和41年)7月1日には長野工場で全般検査を実施するなど、まだまだ寿命は持つと、考えられたが・・」との記述があり、「検査の際に書き込まれた数字を科学館が塗り替えた時にもきちんと同じように書いた。」と想像します。何でもない、こういう文字まできちんと現役時代を再現することにこだわった科学館のスタッフは素晴らしいと思います。
 それにしてもB6の世界はとても奥深くて、面白い。
【追記】堀越さん、リンクの許可やお返事ありがとうございます。B6の現役時代の姿、とても素敵です。「私の撮った鉄道写真」をこれからも楽しみにしています。
【追記(2012.6.19)】コメントいただいたように、lodgershinmeishrineさんの石原産業のB6の動く姿です。このカマが引退するわずか2年前に全般検査を受けていたことは文中に述べたとおりですが、この映像には予想以上にボイラーやシリンダーなどが美しい状態で頼もしい姿で登場します。
 石原の構内でワム等を入換する姿が健気。桟橋のクレーンなどが映り込んでいたり、一番ラストは今もある鈴鹿川の磯津橋につながる踏切。カメラは塩浜方面へパンして終わります。ぜひご覧ください。

石原産業のB6,2412型,改、B6,No.2412 steam locomotive at Ishi-hara industry Co.Ltd.,improved.  

B6回顧録 国鉄編 (RM LIBRARY(16))

B6回顧録 国鉄編 (RM LIBRARY(16))

B6回顧録 私鉄・専用鉄道・専用線編 (RM LIBRARY(17))

B6回顧録 私鉄・専用鉄道・専用線編 (RM LIBRARY(17))

*1:Rail Magazine317、2010年2月号「トワイライトゾーン」の記事による

*2:今も中古市場では人気があるようですね