修羅の日記(公開試運転中)

ダイアリーから移転しました

「むらむら・じおらま」第5巻 『淵(ふち)を作る」

■僕はモジュールやレイアウトにはよく水面を取り入れてきました。橋が好きで、車両が一番格好良く見えるのが橋の上だ、と思っているせいもおります。実物写真をみても橋の上が多いのですが、これは撮影に邪魔なものが少ないせいもありますね。橋のシーンには水面の表現が不可欠。木曽を訪れると森林鉄道のみならず、中央西線においても川沿いに街並みがあって、その中を線路も川沿いを走っています。

■作例はグロスメディウムの塗り重ねによる水面です。水面作りにはこれまで、透明シリコン、EZウォーターを試しております。EZウォーターは厚くするとクラックが入る欠点があります。これはメールをくれたアメリカの友人も同じ体験をしたとか。また色が若干茶色っぽい。これをきちんと扱うためにはヒートガン(ドライヤーでは温度がでないのでだめ)が必要です。透明シリコンは底をリアリスティックにつくるのでしたら、透明度も高く一番いい選択ですが、いかんせん高価で、しかも手間がかかります。
■安価で、それこそ一番イージーなのはグロスメディウムによる擬似水面。左を見てください。これ、塗装だけですよ。


■お手軽水面は、まず底の色を塗ることより始めます。べースとして岸辺のバフと一番深い所のディープグリーンをエアブラシで塗り分けます(左�)。アクリル絵の具のグリーンと白の配合でやや明るい色を薄く塗り塗り斑をつけます。(左�)もう一度エアブラシで深い方からディープグリーンを適当におきます。(左�)
■この後、木工用ボンド(ジェル・メディウムの代用)を直接塗り、その後、グロスメディウムを3回ほど塗りました。
■筆ムラが水面の表面になります。水が動く方に向けて円弧状に筆を動かすとよい結果が得られます。川ならば下流に向けて、です。
■水際には打ち寄せられた木などを配置したりすると実感的です。
■以上で5回にわたるシーナリーの基本的な解説は終わりです。こんな小さなジオラマでも車両を置いてみると結構、楽しめます。レールを磨き電気をとり、車両を走らせてみると、行ったり来たり忙しいけれどちゃんと走りました。よかった!「肩ならし」のつもりが結構入れ込んでしまい、忘年会シーズンで、アルコールの誘惑とも闘いながら九分通り完成することができました。製作作業に従事したのは、のべ10日間というところ。明日はクリスマス・イブです。ジオラマを前にして、赤沢の春の芽吹きを想像しながら、「スーパー・ドライ」が美味い。
(1998年12月23日記)

【2011年の追記】■蛇足ながら、水面にほこりなどが着いたりするので、車用のワックスを表面に塗ると、ほこりを取りやすく、水面がより一層輝きます。車用ワックスはいろいろありますが、ここは塗膜を傷めない高級な天然カルナバ蝋使用シュアラスターワックスを使ったりします(笑)。
 ■ この「水面」が縁で、この後、偉大なモデラーに「水面の作り方を教える」という名誉に浴することになりました。2000年ごろだと思うのですが、NGJの神戸・大阪周辺のモデラーのみなさんに混ぜていただいていた伝説の「六甲ミーティング」で千曲鉄道の平野和幸さんに出会い、計画・製作中の「臨港鉄道のセクション・レイアウト」の海面の表現のお手伝いをすることになりました。電話ではニュアンスが伝わらず、西宮のお宅に道具一式持参して、ベニヤ板の切れはしに上と全く同じ方法で海面のサンプルを作りました。
 平野さんと接していて、この人は本当にすごいなと思ったのは、自分はベテランだと全く驕ることなく、趣味を全うする力、私のような若輩からでも貪欲に知識を得て前に進む力です。最近、お会いする機会が無いのが残念ですが、そのあとも何度かお邪魔したりして、一緒にいるととても楽しい思いがしました。
  なお、このセクションはRMモデルス101(2004年1月号)「ウォーターフロントの模“景”を作る」特集に「富津港繁盛記」として2回連載で収録されています。特に2回目の102号(2004年2月号)には「機帆船」の実物と模型について述べられており、何気なく書かれた記事なのですが、実は日本の内航海運史に関する資料としても、たいへん貴重な記事なのです。平野さんから写真、図面などを預かってコピー、電子化させていただいており、いずれ自分の手でも機帆船についてネットで公開できたらと願っております。