修羅の日記(公開試運転中)

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カマタの操車場はここ?テレビドラマ「砂の器」

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松本清張の「砂の器」は映画や何度もドラマが制作されており、自分も何度も見ているので、ストーリーはほとんど頭の中にあり、あとは原作とどこが違うとか、配役や撮影場所がどこかとか、余計なことに関心が向いてしまう。前の拳銃の話で、「あまりにもシビアな細かい時代考証はやめて芝居を楽しもう」と書いておいたのに・・鉄道の話となると。
 さて今回の「砂の器」はテレビ朝日制作で玉木宏主演。2011年9月10日(土)11日(日)に二夜連続放送された。本当は3月12日(土)・13日(日)に放送する予定だったが、大震災の影響で気の毒にも放送延期になってしまった。主人公は若い吉村刑事(玉木宏)に設定したのが他のドラマと違う。1974年制作の映画版・吉村刑事は森田健作で今西刑事は丹波哲朗だった。
 時代の設定は原作通りに昭和35年に置き、出だしのタイトルには「三丁目の夕日」と同じように東京タワーができていく途中のシーンやモノクロの世界から有楽町の風景。ガード、日劇などが眼に飛び込む。一部に機関車やバスなどあり得ない、おかしなところはあるが、CGや小道具を利用して、やたら念入りに「昭和35年」をアピールする。
 物語は東京・蒲田の操車場で、昭和35年12月12日午前3時過ぎに一番列車の点検をする職員が死体を発見することから始まる。
 ここで貨車に「東日本セメント」(CGで架空の会社名に)の文字、「セメント専用」との文字の下には「東藤原駅常備」。形は三岐線を走る「タキ」じゃないか!!と驚いた。その後のシーン、警察の捜査が操車場で開始されて「砂の器第一夜」とのタイトルがでるが、画面左には、昭和35年にはあるはずのないDD51の姿が、ここはひょっとしてJR関西本線富田駅か?タキは番号91939と読める。形式タキ1900型、太平洋セメント藤原工場の私有貨車だ。*1蒲田の操車場はやはり三岐鉄道東藤原駅構内だった!!
■ドラマの公式HPのフォトギャラリーでは玉木宏のバックに三岐のED45が堂々とでているじゃないか!
http://www.tv-asahi.co.jp/suna/
三岐鉄道の他に桑名市六華苑でも田所代議士の豪華な家という設定でロケが行われた。六華苑は諸戸清六が著名なイギリス人建築家ジョサイア・コンドルに設計を依頼した和洋折衷の絶妙な建物。諸戸清六は日本の山林王、関西鉄道四日市の鉄道などのスポンサーでもある。「六華苑」の名は清六の「六」と桑名の別名「九華」にかけてあるのかな。
名フィルムコミッション
http://www.kuwana-fc.info/result/page/2
■また、線路のシーンや造り酒屋のシーンは滋賀県豊郷町信楽高原鉄道で撮影。タイミング良く雪もあったりする。
滋賀のロケーションガイド
http://shigaloca.shiga-saku.net/e673374.html

 国電蒲田駅近くのバー「ボヌール」で被害者と犯人らしき男がハイボールを注文、店員の証言で、「東北訛りで『カメダは今も相変わらずですか』ということばが聞こえた」という手がかりを掴む。やがて「カメダ」は人名ではなく地名だと判明する。また島根県の一部の地域で東北弁に似た方言が使われているとの国語学者の証言で、カメダは木次線沿線「亀嵩(かめだけ)」だという事実にたどりつく。
 被害者の身元は島根県亀嵩で巡査をしていた三木健一(橋爪功)と判明する。その後、玉木宏演じる吉村刑事とその先輩、小林薫演じる今西刑事、二人の刑事が再び現場の操車場で会話するシーン。後ろにタキが映る。車体番号71990.撮影場所は東藤原駅富田駅か、どっちだ!?タキにはレタッチで、架空の「東日本セメント」の会社名、「東藤原常備」の「東藤原」の3文字を消去してある。細かいことに、こだわるなーー東京の蒲田が三岐の操車場ではまずいものね。このシーンの最後には あっ!玉木の後ろで三岐のED45が動き出した。入換が始まるぞオ!
 ふたりの刑事は急行「羽黒」で秋田県羽後亀田駅」へ出張したり、東海道本線準急153系「東海」急行、京都発DF50が索引する急行「出雲」で山陰本線宍道で乗換、木次線ディーゼルカーに乗って亀嵩(かめだけ)を目指すなど、夜行列車を利用してあちらこちらに出張して地道に捜査をする。この辺は清張作品の醍醐味。その時代の列車が時代設定で何だったかを想像をめぐらす。ドラマでは赤い線の入った交直両用ボンネット特急がでてくるが、東海道線151系「こだま」だと好意的に解釈。でも刑事の出張費では「こだま」には絶対乗らないなあ、と思いながらも・・(笑)*2 

 なお配役についての感想だが、玉木宏はギラリとした眼が印象的で熱演だけれども、「昭和35年の刑事」の泥臭さが無く、ずっと最後まで違和感を感じながら見ていた。いっそ演技達者な和賀英良役の佐々木蔵之助と役を入れ替えた方がいいのではと思い、想像すると、なかなかハマって違和感のないドラマになるなあとも思った。ただ玉木が作曲家でオーケストラを指揮したら、まるっきり「のだめカンタービレ」の千秋真一になってしまい、佐々木の刑事は「ハンチョウ」になってしまい、まるで「おふざけ」になるので端からバツだろうけれどね。見ていない皆さんもDVDが発売されたら、想像してみてネ(笑)。

 

 

*1:Rail Magazine 2011年7月号 南野哲志さんの「三岐鉄道開業80周年」記事中、車体番号のリストから

*2:参考文献:「昭和の鐡道と旅〜松本清張全駅全列車」朝日新聞出版